ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう2019━━トークイベント・完全版レポート公開!!①

こちらは2019年「ヤマシタトモコに『違国日記』のことを聞いてみよう2019」トークイベント・完全版レポートになります。ぜひ、配信中の2021年度版と合わせてお楽しみください!
株式会社シュークリーム(マンガ編集プロダクション) 2021.12.24
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2019年5月12日(日) Asagaya/Loft A(東京・杉並区)にて、ヤマシタ先生のトークイベントが行われました!『違国日記』4巻の刊行を記念して行われた本イベントでは、読者さんたちから事前にいただいた質問をもとに、インタビュアーの山本氏と担当K川を交えて『違国日記』についてたっぷり語っていただきました。当日の様子をお伝えした『FEEL YOUNG』7月号掲載のトークレポートが好評につき、ここでは雑誌で紹介しきれなかったトークを加え、ファン必見情報満載の完全版をお届けいたします!!

Q:「女性同士かつ年の離れた2人の同居生活のお話『違国日記』を描くことになったきっかけはなんですか?」

ヤマシタ これまでインタビューなどでこのことについてちょこちょこ聞かれて、そのたびに要領を得ない答えになっているんですが、次の連載をどうするか考えたときに、読者にやさしい話を描こうと思ったのと、女性同士がユナイトする…というと言い方が変なんですが、絆っていう言い方もすごく嫌(笑)、えーと、女性同士の繋がりを描きたい気持ちがあったところに、ポール・フェイグ版の『ゴーストバスターズ』を観て背中を押されたのが大きいです。あれは最高の映画だったので。実はこれというきっかけがないんですよ。連載するからなんか考えなきゃな…と思って考えた(笑)。

――“読者にやさしい”というのは、“わかりやすい”という意味ではないですよね?

ヤマシタ そうですね。その前に描いていた『花井沢町公民館便り』があまり売れなくて、振り返ってみたら読者に対してやさしくなかったと反省すべき部分があったんです。なので、読者をあまり傷つけるのをやめようと思いまして。私はわりとフィクションで傷つくのが好きなほうなので、そういうのをつい描いてしまいがちなのですが、考えてみたらみんな疲れているよね、と(笑)。それで、そういうところは控えめに、読んでいてハッピーになれるものを描こうかなと思ったわけです。

――『ゴーストバスターズ』の後押しがなくても、いずれは女性同士の繋がりを描こうと思っていました?

ヤマシタ それは、はい。私自身フェミニストなこともあって、描きたいテーマのひとつとしてずっとありました。ただ、ポール・フェイグ版『ゴーストバスターズ』の女4人集まったときの最悪のノリというのが本当に最高で(笑)、観終わってハッピーだったなーと思わせてもらったことはきっかけといえば大きなきっかけだったように思います。

――現在の『違国日記』のような叔母と姪という女性2人の話ではなく、『ゴーストバスターズ』のような複数の女性の物語を描こうとは思いませんでした?

ヤマシタ 思いました。半分同居しているような女性4、5人くらいが実はスーパー戦隊でご近所の平和を守るというのを頭の中だけで考えてみたのですが、立ち行かなくなったのでメモを取ることもなくすぐにやめました(笑)。

Q:「作品の土台作りの過程が気になります。きっかけに加えて、

・世界観

・ストーリー

・キャラクター(それにまつわる境遇)

はどんな風に固まっていった物語なのでしょうか? また、ストーリーに関しては事前にかなり決めて連載を始めていらっしゃいますか?」

ヤマシタ そんなの考えてないですよ!(笑)

――そう答えると思っていましたが、いちおう聞いてみないと(笑)。

ヤマシタ いや、ちゃんと考えている作家さんもいますけど、私は考えていないです。

――ただ、『違国日記』に関してはこれまでのヤマシタさんとは違って、ネタ帳を作っているんですよね?

ヤマシタ 前に描いたことや描こうと思っていたことを忘れちゃうということだとか、ネームを終えたあとでメモ書きとかいろいろなものをうっかり捨てちゃうことに、連載を何本かやってようやく気づきまして、今回はノートを導入したところ「文明の利器…!」と(笑)。 字が汚すぎて、自分でも判別できないことはあるんですが、それでも書いたことが全部残っていることに感動するし、自分でも忘れていることが書いてあったりして役に立っています。

――そのネタ帳の1ページめに、描きたいテーマのようなものが列挙されていまして。(会場のスクリーンに映し出される)

ヤマシタ 雑誌のインタビューを受けたときにネタ帳を見せることになってノートを開いたら、これが書いてあって。書いたことすら忘れてたけど、なんかいいことが書いてある~って(笑)。 書いたことを忘れていたくらいなので、どういうつもりで書いたのかも覚えていないのでなんなんですが、おそらく『違国日記』の1話を考える前かあとくらいに、こういう話にしようと思って書いたのではないかと推測されます。

――これを核にして話を考えていったというわけではない?

ヤマシタ なんせ書いたことを忘れていたくらいですからね(笑)。

――そうだった(笑)。質問にもありましたが、話の流れはどれくらいまで固めておいたんですか?

ヤマシタ ほぼ何も決めてなかったですね。顔も定まっていなくて、1話はふたりの顔が不安定なんですよ。1話を描き終えた時点では、そのあとのことは何も考えていなかったです。

――1話の時点では1話のことだけが見えていたということですか?

ヤマシタ そうですね。ほかのキャラクターのことは考えていなくて、とりあえずこういう話って感じで1話は描きました。(映し出されたメモ書きを見ながら)誰が描いたんだ、これ。

――あなたです。

ヤマシタ 何も覚えていない(笑)。

――叔母と姪の話ということに固まったのはいつくらいなんですか?

ヤマシタ 担当さんと最初にうちあわせた時点で、ぼんやりとは頭にありました。若い女の子と30代半ばくらいの独身の女で、いろいろやりとりが発生する話を描きたいと言った気がします。そのときに考えていたものと今描いているものは、まったく違うものになっていますが。そのときになんとなく考えていたのは、女の子がもっとイケイケな感じで生意気なタイプでした。

――過去作で叔父と姪の話を描いたりもしていますが、だから今回はあえて叔母と姪というわけではなかったんですよね?

ヤマシタ 違いますね。たぶん、叔父と姪、叔母と姪といった関係が好きなんですよ。無責任な大人だけれど、保護者になりうるというポジションというか。

――そのことについて雑誌のインタビューで、「以前からそういう関係が好きだったが、『違国日記』では槙生に発生している責任についても描いているのは、自分も年を重ねて責任について考えるようになったからだ」というようなことを話しています。

ヤマシタ 『違国日記』のテーマ的にも、子供が大人にとってどういう存在であるかとか、子供に対してどういう大人であるべきかということを無視できないというのが大きいですね。

――物語の全体像というのは、どれくらいで見えてきたのですか?

ヤマシタ 1ヶ月くらい前に、ラストはこういうシーンにしようと思いついたので、ついこの間ですね(笑)。それまではぼんやりと着地点が見えていたくらいで、こんな感じで終わると思いますとしか言えていなかったのですが、突然思いつきました。

――ほかの作品でもそんな感じでラストが見えてくるのですか?ヤマシタ いえ、作品によります。最初から着地点をはっきりと決めて描くこともあります。でも、わりと描いているうちにキャラクターの性格が見えてきたり、事情が変わってきたりすることもあるので、今思いついている『違国日記』のラストシーンもそのとおりになるとは限らないんですが。――これまでのほかの作品と比べて、『違国日記』は着地点までの流れが見通しやすいほうですか?

ヤマシタ いや、そんなことはないですね。この話はとにかくネームができないんですよ!(笑)

――それはなぜなんでしょうか。

ヤマシタ 語弊があってはならないと思うからでしょうね。わりと繊細な事柄や感情を描こうと努めているし、丁寧に読んでくださっている方が多いように感じるのもあって、読んでいる方に誤解させるような言い回しや表現があってはならないと意識すると、結構難しくて、毎回ネームには苦労しています。

――セリフやモノローグなどの言葉選びにより苦心している?ヤマシタ その状況でそのキャラがどんなことを言うか、それがこの話で描きたい倫理に悖っていないか、一生懸命考えないと正解にたどりつかない感じです。これまでの作品に比べて、本当にたわいのないやりとりがかなり難しいですね。

――ネームがここまで大変なものはほかにもありました?

ヤマシタ 特にはないかな。『違国日記』はたわいない日常のやりとりが大半ということもあって、ここまで大変なのは初めてかもしれないです。

『違国日記』でネームがすんなりできたのは、4巻の最後に収録されている20話くらい。あれはエッチだから(笑)。

――エロかったですね(笑)。

ああいう情動的な話だとスムーズなんですね。

ヤマシタ もうすごい楽です。

(インタビュー・文/桜雲社・山本文子)

***

トークレポートは全5回にて公開予定。次回からも濃密なトークをお届けいたします。第2弾の更新をどうぞお楽しみに!! また、ヤマシタトモコ先生『違国日記』は『FEEL YOUNG』にて絶賛連載中! こちらも是非お見逃しなく!

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